川久保玲のインタビューがasahi.comに出ていた。彼女の発言は昔から一貫していているので、これまでの発言を知っていると、それほど目新しいことは言ってないんだけども。でも写真がカッコいいねぇ!異性ながらこんな風に年を重ねたい、と思うお方。
——最近の安さ、早さを求める傾向への抵抗でも?
若い人たちが考えたり作ったりする楽しみや必要性を忘れていくのが心配なのです。たとえば、ジーンズ1本が何百円なんてありえない。どこかの工程で誰かが泣いているかもしれないのに、安い服を着ていていいのか。いい物には人の手も時間も努力も必要だからどうしても高くなる。いい物は高いという価値観も残って欲しいのです。
■いい物は高いという価値観も… 川久保玲
http://www.asahi.com/fashion/beauty/TKY200912170283.html
ひとつ興味深く感じるのは、あれだけメディアに露出することを避けていた彼女の発言を、近頃メディアでみる機会が増えたな、ということ。これは、今のうちに若い人たちにメッセージを伝えなければという、すでに67歳になった彼女なりの危機感のようなものの現れかな、とも思う。
美術手帖 2009年 12月号 [雑誌] 美術出版社 2009-11-17 by G-Tools |
これは先日のエントリーでもリンクをはった、1992年のインタビューでの発言。
川久保の関心は永続的な価値を創造することにある。しかしそれは今日の消費社会の逆説でもある。
「私の作る洋服は高価ですが、それは特別の生地を作って、あらゆるディティールにまで確かな技術を追求した結果そうなるのです。3着の洋服を買う代わりに、どうしてそのお金で1着買ってそれを楽しもうとしないのでしょう。世の中には不必要なものが多すぎます。この会社がたくさん洋服を作らなくても経営がうまくいくように願う一方で、人々の価値観が変ればいいとも思います」
http://10corsocomo.blogspot.com/2008/12/1992.html
IKEAのような場所に行くと気持ちが悪くなる。世界のどこかで恐ろしい搾取的な労働賃金で作られたであろう商品が、船に乗せられ、車で運ばれてきて、コップが一つ30円くらいで売られていたりする。それを分かっていながら買うということは、不正義に加担することだ。
多少高くても良いものを買うというのは、良いものを作ろうと誠実な仕事をしている人を応援することにもなる。そしてそれを10年とか20年とか、あるいは世代を超えて使い続けることの方がカッコいい、という価値観がもう少し広まればよいと思う。
そういえば昨年亡くなった祖父の形見分けで腕時計をもらった。故障していたので修理にだしたのが先日戻ってきた。革のベルトに残っていた跡で分かったが、祖父と自分の手首の太さは同じだった。いままで腕時計を使うことはほとんどなかったけど、使ってみるととてもしっくりと馴染んだ。