2015年10月10日

音楽とクラウド・ファンディング : 音楽家とファンの新たな関係

『フェリス女学院大学音楽学部紀要』第14号、3-24頁、横浜:フェリス女学院大学、2014年。

 近頃、日本でもクラウド・ファンディングについて見聞きすることが多くなってきた。クラウド・ファンディングとは、『群衆を意味するcrowdと、資金調達を意味するfundingからなる造語で、資金を必要とする個人や法人がプロジェクトの中身をインターネットで公開し、運営業者がインターネット経由で資金を集め、資金を必要とする個人または法人に、投資や寄付をする仕組みの総称』(山際 2013: 10)である。音楽に関わる立場からクラウド・ファンディングが興味深いのは、ファンが直接的に資金提供することで、音楽家がやりたいことを可能にする構造にほかならない。
 もう一つ興味深いのは、売上に対して音楽家が受け取ることができる金額の比率が、既存のメディア産業と比較して格段に高いということである。旧来型のレコード会社から音楽家がCDを販売した場合、音楽家の手元に残るのは売上のわずか1割ほど、残り9割はレコード会社や所属事務所などが分配する。一方、クラウド・ファンディングにおいて調達された資金は、1〜2割程度がクラウド・ファンディング事業者に手数料として徴収されるが、残りの8〜9割が音楽家の手許に残ることになる。つまりメジャーレーベルからでは、音楽家とレコード会社の取り分が1:9であるのに対し、クラウド・ファンディングでは音楽家と事業者の取り分は9:1と完全に比率が逆転している。
 この2点を鑑みると、クラウド・ファンディングがこれからの芸術文化活動にとって非常に重要な経済的基盤の一つとなることは必定である。そこで本論では、クラウド・ファンディングとはいかなるものであるのか、また音楽の領域におけるクラウド・ファンディングの現状はどうなっているのかを、文献および事例の調査を通じて明らかにした上で、音楽にとってのクラウド・ファンディングの意味を考えたい。

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2007年08月12日

公共ホールの政策評価―「指定管理者制度」時代に向けて

41376SDQ5CL._SL160_.jpg公共ホールのアイデンティティーとは? 公共ホールに求められるアカウンタビリティとは? ——文化施設の実地調査にもとづき、公共ホールの総合的な評価指標を開発。さらに、地域貢献的な文化活動を推進するための公共ホール運営のあり方を提言する。





書名:公共ホールの政策評価 ー「指定管理者制度」時代に向けて
監修:中矢 一義
著者:佐藤望,石井明,猪俣正幸,瀬藤康嗣,宮田昌子
出版社:慶応義塾大学出版会
刊行日:2005.10
ISBN:4-7664-1220-6 / 222ページ

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ポスト・テクノ(ロジー)・ミュージック:拡散する〈音楽〉、解体する〈人間〉

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「音楽」「テクノロジー」「人間」、相互作用するクリティカルな関係性の探求。「デジタル表現の4つの特徴」「表現メディアとしてのコンピュータとネットワーク」など様々な観点から、音楽とテクノロジーの関係に迫る。





書名:ポスト・テクノ(ロジー)・ミュージック:拡散する〈音楽〉、解体する〈人間〉
編著:久保田 晃弘
共著:椹木 野衣, 佐々木 敦, 岩井俊雄, アルミン・メドシュ 瀬藤 康嗣ほか
出版社:大村書店
刊行日:2001年12月
ISBN:4756320260(355ページ)

2007年08月11日

インターネット時代の音楽著作権と収益モデルの検討:『弱い著作権』の音楽情報財の収益モデルを巡って

瀬藤康嗣, 丹羽順子: "インターネット時代の音楽著作権と収益モデルの検討:『弱い著作権』の音楽情報財の収益モデルを巡って", 文化経済学4(4), 文化経済学会<日本>, 2005年。

概要:
インターネット時代に適合した音楽著作物のビジネスモデルの提案を行う。そのため、著作権の中でも財産権よりも人格権を優先する『弱い著作権』の可能性について検討を行った。その結果、『弱い著作権』の音楽情報財を無償で流通すると、著作権の『弱さ』ゆえに容易かつ広範囲に流通するのでプロモーション効果が上がり、またコンサートなどの補完財との抱き合わせにより収益をあげられることを確認した。

Abstract:
The purpose of this paper is to suggest a business model suitable for the era of the internet. For this, we examine the possibilities of distributing free music protected by weaker copyright, which accords moral rights priority over property rights. As a result, we testify that weaker copyright has promotion effects because information is easily and widely distributed among people, and it is possible to make profits with complementary goods such as live concert tickets.

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2007年08月06日

学会発表

■Seinoshin Yamagishi,Kohji Setoh:"Variations for WWW - Network Music by MAX and the WWW", International Computer Music Conference, University of Michigan,1998.09

■山岸清之進,瀬藤康嗣:"MAXとW Serverを用いたWebのための音楽創造環境ネットワークミュージックアプリケーションVariations for WWW", 情報処理学会,神戸ジーベックホール, 1998.12

Kohji Setoh, Hiroki Kobayashi:"Global Windchimes Project - Soundscape desigin utilizing the internet", SoundPractice,Dartington College of Art UK,2001.02

■Nodoka Ui, Kohji Setoh:"WaveRings! : Water Installation for Commnication in Public Space",Le Genie et le pouvoir de l'eau,Musee de la Vieille Charite,Marseille, France, 2001.10

瀬藤康嗣:"公共ホールにおける市民参加",慶應義塾大学日吉芸術ホール研究プロジェクト2002年シンポジウム「21世紀の公立芸術ホール ― 理念・目標・事業・評価のサイクル確立のために」,慶應義塾大学日吉キャンパス,2002.07

■一川誠, 田中陽明, 瀬藤康嗣: "一般的参加者における主観的時間評価に影響を及ぼす諸要因の検討",日本基礎心理学会第24回大会, 立教大学, 2005.12

論文/報告書(その他)

瀬藤康嗣「音楽とクラウド・ファンディング : 音楽家とファンの新たな関係」『フェリス女学院大学音楽学部紀要』第14号、3-24頁、横浜:フェリス女学院大学、2014年。[PDF]
瀬藤康嗣「芸術と社会の新しい関係:NPO法人ルートカルチャーの実践を通じて」『フェリス女学院大学音楽学部紀要』第10号、88-128頁、横浜:フェリス女学院大学、2010年。
瀬藤康嗣「フェリス女学院大学におけるコンピュータ・ミュージック教育」『Juce Jorunal』18巻3号、27-29頁、東京:私立大学情報教育協会、2009年。
瀬藤康嗣「コンピュータを用いた音楽教育方法に関する考察」『IT機器(TV会議やポッドキャスティングなど)の教育的利用に関する研究 報告書』、34-38頁、横浜:フェリス女学院大学、2009年。

学術論文誌での作品紹介(査読付き)

- Kohji Setoh "Not Specified", Leonardo Music Journal CD, vol. 9, (curated by Guy Van Belle: Power and Responsibility: Converted to Streaming Between Machines), MIT Press, 2001.

- Nodoka Ui, Kohji Setoh ‘Wave Rings’ Leonardo, 36(4), 283-4, MIT Press, 2003.

2007年08月01日

招待講演

■"ポスト・サンプリング音楽論 -サンプリング以後の音楽制作-"(共同討論者:クリストフ・シャルル、半野善弘、佐々木敦),InterCommunicationCenter,初台,1998.06

■"テクノカルチャー 超デジタル −テクノカルチャー/ネットカルチャー"(共同討論者:椹木野衣、陣野俊治ほか),ドイツ文化センター,赤坂,1998.09

■"ArtStalker",日仏会館,恵比寿,2001.03

■"NO CHANGE, NO CHANCE Les aspects culturels du Japon numerique",La Villette,Paris, 2001.12

■シンポジウム『アート/自然/テクノロジー:新たな情報生態系へ』(共同討論者:レアンドロ・ピサノ(Interferenze フェスティバル ディレクター), 港千尋(写真家・著述家)), Interferenze Seeds Tokyo 2010, 原宿VACANT, 2010年6月27日