リモート講義はじまりました

リモート講義をしているという話をすると、どうやっているの?と質問を結構いただくのですが、あるところに寄稿することになったので、ついでに「考え方」「講義の進め方」「学生の様子」をまとめてみました。画面の向こうでセンセーたちも案外頑張っているんです(大変なのは、ZOOMのチャットと、LINEと、メールで授業中に問い合わせがくること!)。

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○考え方
 3月に仕事がどんどんキャンセルになり、4月の授業がどのように始まるのかはっきりしない時期にかけて、たくさんの読書でインプットすることができました。
 中野民夫が指摘するように「『自ら考え』『自ら行動する』人を育てようと、指導すれば指導するほど、主体性が育たず指示待ち族になる」という教育のジレンマがあります。このジレンマを解消しようと近年自分なりに模索していたけど、今回のコロナ禍でリモート講義が決まり、そもそも対面式授業の内容をオンラインに移しても有意義な講義になるとは思えず、大幅なアップデートにチャレンジするしかないなと思いました。
 今回大事にしようと思ったのは、「正解」を教えないこと。過去のパターンから導きだされた「正解」から未来を予測するという思考方法の限界を指摘する議論がいろいろありますが、社会の大きな変革期でもあるいま、まず自分で調べて考える習慣を身につけてほしいなと思っています。
 「説明できないモヤモヤを大事にする」(高橋源一郎)「自分のなかのモヤッとする感覚。理屈の上では解決済みなのに、自分の内心には未解決の問題が残っている」(藤田一照)という感覚を大事にしてほしいと伝えながら、考えるキッカケとして、すでに確立した理論や統計データなどの情報を提供しつつ受講者の脳ミソをシェイクして、「自分が現在置かれた状況から湧き上がるクエスチョン」に出会ってもらい、それについて自分なりに考えてもらうことを重視したいと思っています。
 「正解を教えることより、受講者自身が自分の課題を発見することを大事にする」「受講者同士が、互いに教えあって学び合う環境を作る」上では、Visual Thinking Strategy〜アートシンキングの書籍、初等教育におけるクラスファシリテーションについての書籍、あとは協同学習についての書籍から、ヒントとインスピレーションを得ています。

中野民夫(2003)『ファシリテーション革命:参加型場づくりの技法』
高橋源一郎(2019)『答えより問いを探して』
藤田一照(2019)『ブッダが教える愉快な生き方:真の学びは自分が変わること』
鈴木有紀(2019)『教えない授業:美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方』
山本崇雄(2019)『「教えない授業」の始め方』
杉江修治(2011)『協同学習入門:基本の理解と51の工夫』

○講義の進め方 
「ZOOMでのリアルタイム講義」「映像や教材を用意しての反転学習」「学生同士で疑問をシェアして協同学習」を基本として組み合わせながらやっています。
 講義については、ZOOMで一方的に教員が喋り続けるのは退屈に違いないと思うので、

(1)前回の振り返り(前回講義で寄せられた質問に答える)(20分)
(2)講義(30分)
(3)講義内容と、そこで湧いた疑問をノートに一人でまとめる時間(15分)
(4)ZOOMのブレイクアウトルームを利用して、授業で興味を持った内容と疑問を4人一組でシェア(15分)
(5)Google Formに講義の振り返り&疑問を記入(5分)

 というのを基本構成にしています。
 とくに(4)の部分が好評で、『他の方の意見も聞き、自分にはなかった目の付け所をたくさん発見することができて理解が深まるため、ブレイクアウトルームはとても良い学びの場だと思った』『グループワークをすることにより、意見を共有してより授業内容を理解でき、深く考えることができていいなと思いました』というような感想が毎回寄せられます。

 実習系の授業はいろいろ大変(例えば、大学のPCルームと違い全員違う環境で受講しているので、ソフトのインストールするだけでひと騒動)で模索中ですが、とりあえず良かったのは、反転学習+協同学習で

(1)事前に課題を出しておく(例:事例のリサーチ、オンライン教材でプログラミングの独習、動画を用意しておいてソフトの使い方を学ぶ)
(2)リサーチしたことや、わからなかったことを事前にまとめておいてもらう
(3)講義時間はZOOMのブレイクアウトルームを利用して、まずお互いの疑問点を教え合う。グループ内で解決できない疑問は教員が対応。

 というやり方で、結構進められることが分かってきました。講義前ににリサーチをしてもらう課題では『事前に自分で事例を調べてからみんなでそれを共有し合う、という授業形式がただ受け身で話を聞くより理解が深まっていいなと思いました』と、まさに!という反応ももらっています。
 とはいえこれから今まで学んだことを総動員して制作を行うフェーズに入ったときに、どんなトラブルが起こるのか、未知数ではあります。
 機材構成としては、MacBookPro 16インチ+サブモニター+iPadで、音声はRMEのインターフェース+ダイナミックマイクでやっています。マイクも色々試しましたが、今のところSennheiser e935で落ち着きました。

○学生の反応
 普段、特に人数の多い講義では、週が進むにつれて出席者が減るものですが、今のところは毎回9割以上が出席で、リモート講義のほうが学生も出席しやすいようです。日本の大学生は学習時間が短い、という話が以前からありますが、リモート講義になったことで全般的に課題が増えて学習時間が伸びているようで、これは良い変化なのではないかと思います。
 「学生同士で疑問を共有し、教え合い、議論する」というやり方は、学生にも支持されているようで、個人的にもやりがいをもって臨めています。今回リモート講義で得られた良い部分は、対面授業になったとしても、大事にしたいと思います。